星を読め

ラピタ人という民族がいる。いや、いた。
広大な南太平洋に散らばる幾千の島々。
1000年の時をかけて、島々を何の計器も持たない人々が渡り、人の居住域を広げてきた。
それらの航海者たちをラピタ人と呼ぶ。
彼らの伝統航海士は、星の巡りを歌にして、その歌を歌いながら星を見ながら何も見えない大洋を行く。

「スターナビゲーション」

ほとんど全く話題にならなかったが、ラピタ人の最終到達地、ハワイから航海カヌー「ホクレア」がスターナビゲーションでやってきたことがある。
じつは、日本の縄文人は、弥生人登場後にこつ然と姿を消すが、もしかすると航海者として琉球弧を南下して、台湾に到達し、そこから島伝いにニューギニアへ、サモアへ、トンガへ、イースター島へ、ソシエテ諸島へ、そしてハワイへと数千年をかけて渡って行ったのかもしれない。そういう意味では数千年の時をへて、ラピタ人は彼らの技術で船を操り、里帰りを果たした事になる。鉄とプラスチックとコンクリートで出来た故郷へ。

ナショジオの記事では、言語学的にはラピタ人の言語は台湾にそのルーツがあるという。これを読んで、ぼくは西表でこつ然と姿を消した土器文化の人々を思う。西表では、土器文化の痕跡のある地層の上にしばらく空白があり、石器文化の地層がある。土器文化人はあるときこつ然と姿を消し、その後にかなりたってから遅れた石器文化しか持たない人々がやってきた。

遥かな過去、あの島で何かがあったのかもしれない。日本から到達した縄文人たちはある日、皆で未知の大洋へ終わりのない航海を継続する事を決定したのかもしれない。マングローブの穏やかな河口を、まるで厚い布団をはねのける赤ん坊のように、ある晴れた風の強い朝、航海カヌーの船団で出航したのかもしれない。次の到達地は台湾。そして、未知なる大洋へと続く海の道。。。

新しい出発はいつだって不安だ。でも、まだ見ぬパイパティローマの彼方にはきっと新しい何かがあるはず。

星を読め、風をとらえろ、そして転がり続けろ!